日本酒の素晴らしさを知ろう ・・・ 唎酒師 太田徳也さん(5期)
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5期の太田徳也さんは現役時代『インクジェットプリンターの開発と事業化』を担当し、海外に行く機会が多く、お酒を飲む機会も多々ありました。外国人が自国のお酒に誇りを持っていることを知り、世界に誇れる日本酒のことをもっと知りたいという思いから、定年退職後、“唎酒師(ききざけし)”の資格を取りました。 |
1.日本の醸造技術は世界一
いま、日本酒の醸造技術は世界のトップレベルです。近年、海外で日本酒の評価が高まり、アメリカやフランスの一流のレストランでも日本酒を提供するところが多くなっています。
外国人は、自国のお酒に対する誇りは相当なものがあります。それに対して日本人のほとんどは、日本酒に対してそれほどの思い入れがないように感じています。日本の誇る杜氏たちが丹精込めた日本酒の素晴らしい奥行と広がりを楽しんで頂きたく、日本酒の魅力を紹介したいと思います。
2.唎酒師の資格を取りたい・・・ヨーロッパでのこんな経験から
現役時代、仕事の関係上海外へ行く機会が多く、大のお酒好きだったこともあって、仕事上のお付き合いでお酒に接する機会も多々ありました。
フランスのリヨンで会食の時、飲んだワインがすばらしくおいしかったので、そのことを述べると、リヨンのあるローヌ地方のワインがいかにおいしいか、ボルドー、ブルゴーニュ、ロワール地方のワインと比較しながら説明してくれました。文化としての誇りを持って語る姿勢に感銘を受けました。
イギリスでは、ウイスキーの本場であるハイランド地方の蒸溜所に案内され、そこで初めて飲んだグレンモーレンジというブランドにほれ込んでしまいました。イギリス人が好む銘柄は、このグレンモーレンジやマッカラン、ラフロイグといったシングルモルトだそうです。日本で多く飲まれているようなブレンド品は口当たりが良いが、個性に乏しく、イギリス人はあまり飲まないとのことでした。当時日本で高級品として飲まれていたサントリーリザーブは、ウイスキーモルトが25%しか入っておらず、あとは混ぜ物だと知り、カルチャーショックを受けたのを思い出します。ここでもウイスキーの歴史と特徴を深い文化的教養を持って説明してくれました。
同様なことはワインの産地であるカリフォルニアのナパバレーでも経験しました。外国人は、自分たちの酒文化に強い誇りを持っていて、酒のことを知らない人は、教養のない人とされてしまうことを知りました。
これが、日本人として日本酒をもっと勉強しようと思った理由です。
3.そして唎酒師になりました
当時は仕事が忙しすぎて、唎酒師の資格をとる時間がありませんでした。
会社を定年退職後、イギリスの会社から依頼を受けて、日本事務所の所長を引き受けました。仕事内容は、彼等の技術を日本の会社に紹介し売り込むことでした。会社の幹部が日本へ出張してくるときに、うまい日本料理と日本酒を提供することも大事な仕事となり、時間的余裕もできたので、この時、利き酒師の資格を取りました。2001年6月でした。
イギリスの幹部たちはいずれも、ケンブリッジ大学、オックスフォード大学出の教養人で、ワイン、ウイスキー通でしたが、日本酒のことはあまり知りませんでした。食べるお米と、酒に使う米は何が違うのか、吟醸酒とは何か、山廃とは何かなど、鋭い質問をしてくるので、唎酒師の資格を取っておいて良かったと思いました。
このイギリスの会社とは、60歳を過ぎての仕事なので、3年間の雇用契約でしたが、実際は12年間務めることができました。このように長く雇ってもらえたのは、太田がいると日本でうまい日本酒が飲めると思われたことが大きかったと思っています。
4.唎酒師の役割とは
私のように、この知識を生かして自分で楽しむことを目的とした人もたくさんいます。しかし、唎酒師とは本来、ホテル、レストラン、酒販店、居酒屋などで、日本酒を最適に管理保存し、顧客の要望に合った日本酒を提供することによって、日本食文化の継承、発展に寄与することを目的としています。
日本酒に限らず、酒類全般についての知識を有し、顧客の嗜好にあった酒と料理を勧めることができる有資格者のことです。
利酒師の試験は、2部に分かれていて、まず、ビールやワイン、ウイスキー、リキュール(焼酎)など広い範囲の知識が要求されます。これに合格すると実技として、4種類の日本酒が渡され、試飲してそれぞれの特徴をグラフにかきこみ、それに合う料理は何かを答えます。ふつうは1年間講義を受けてから受験となりますが、時間のない人は自宅で通信教育でも可能です。
5.日本酒の楽しみ方
日本酒にはいろいろな種類があり、季節や好みによって、また料理に合わせて最適なものを選んで一年中楽しむことができます。
夏は、火入れをしていない生貯蔵酒や、吟醸酒を冷やして飲み、
冬は、純米酒を熱燗で飲むのが一般的ですが、飲み方はこれに限定されません。
昔は、灘の生一本とか伏見の酒が有名でしたが、これらの大手メーカーは、人々の好みの変化に対する対応が遅れ、量産にこだわり、技術革新に遅れをとったところが多いのが実情です。
最近人気の売れ筋は、山形、福島、新潟、広島、山口県などにある中小の地酒メーカーが中心です。10年前には3000社の酒造メーカーがありましたが、現在はその半分近くに淘汰されています。各メーカーともに生き残りを賭けて最新の酒造米と、醸造技術を駆使して、うまい酒を造っています。
どのブランドが良いかわからないときは、日本酒の名門酒会に参加している酒屋さんに聞くとか、ネットで自分の飲みたい酒と、入手先を調べるとかすると良いと思います。おいしいお酒を適量飲んで、日本が世界に誇る日本酒文化を楽しんでいただきたいと思います。
6.私の勧める日本酒
現在日本酒を造っている蔵元は1600位あるといわれています。その中で私が今までに飲んだ銘柄は、1000種類を少し超えたくらいです。その中で印象に残っている銘柄を、思いつくままに北から列挙してみます。皆様の銘柄を選ぶ際の参考にしていただければ幸いです。